人間五十年

人間五十年、下天のうちをくらぶれば、夢幻の如くなり。一度生を享け、滅せぬもののあるべきか?

全文:

思えば此の世は

常の住処にあらず

草の葉におく白露

水に宿る月より猶あやし

金穀に花を詠じ

栄華はさきを立って

無常の風にさそわるる

南樓の月を弄ぶ輩も

月に先だって

有為の雲に隠れり

人間五十年

下天の中をくらぶれば

夢幻のごとくなり

一度生を受け

滅せぬ者のあるべきか滅せぬ者のあるべきか

是を菩提の種と思ひ定めざらんは

口惜しかりし次第ぞと思ひ定め

急ぎ都へ上りつつ

敦盛の禦首を見れば物憂さに

獄門よりも盜み取り

我が宿に帰り

禦僧を供養し

無常の煙となし申し

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